ノスタルジー
理由はわからないけど、心が締め付けられる音楽ってないですか?
私の場合は大瀧詠一さんの「LONG VACATION」以後のソロ楽曲に、それを感じます。
メッセージに惹かれるというよりも、楽曲に惹かれるんですよね。
60年代のウォール・オブ・サウンドを忠実に再現した音はノスタルジーに溢れています。
それは決して、その時代を経験しているから感じるものではなく、誰もが青春時代に感じる甘酸っぱさをシュミレーションしているノスタルジーだからです。
さて、先に誰もが感じると書いていますが、誰もが想像できると書き換えた方がいいかもしれません。
大瀧サウンドは、SNS時代の私たちには、もう経験出来ない甘酸っぱさで溢れているのでないでしょうか。小説の中でしか味わえない物語を表現した音楽に心がむず痒くなるんです。
それはファンタジーであり、ノスタルジックであり、リアリスティックな青春なのです。
はつぴいえんどを脱退した大瀧詠一さんは、70年代をCM音楽の作曲家、作詞家として過ごします。3枚のアルバム(いずれも名盤)を発表するもののオリコン最高位は41位と不発。76年にナイアガラトライアングルを結成し、アルバムを発表しますが、それも中ヒット止まり。
「夢で逢えたら」「福生ストラット」「ナイアガラ音頭」などの名曲を作り出すものの、大瀧詠一さんにとって、70年代は不遇の時代でした。
80年代に入り、それまでの作風からオールディーズ成分を抜き出し製作したのが「A LONG VACATION」でした。
世間ではシャネルズ(現ラッツ&スター)や横浜銀蝿が若者たちに人気を博しており、ドゥーワップ、ロカビリーが再熱している時期でした。
世界的にはジョン・レノン死去によるオールディーズブームが起きていました。
そんな時期にリリースされたアルバムはオリコン最高位2位と空前の大ヒット。このアルバムをきっかけに日本でもオールディーズブームが巻き起こりました。
特にチェッカーズはオールディーズ的な音楽で80年代中盤に、日本でトップアイドルの座を手に入れました。
また80年代にも作曲家として、松田聖子「風立ちぬ」太田裕美「さらばシベリア鉄道」森進一「冬のリヴィエラ」と、ジャンルを超えて音楽を提供しています。
それら全てに共通するのは先で説明したノスタルジーです。1997年の「幸せな結末」は、そんなノスタルジーの終着点だと、私は考えています。
大瀧詠一「幸せな結末」